いつか君と桜の木の下で交わしたあの約束。
『恭弥…死なないでね…』
は俯いてぽつりと呟いた。互いにボンゴレの一員であり、最前線での任務が多い僕たちにとって、死は常についてまわる。
『僕が負けるとでも?むしろ君のほうが心配だよ。人の心配する前に自分の心配をしなよ』
そんなもの、無駄な心配以外の何でもない。僕が返した言葉には顔を上げて安心したように微笑んだ。
『うん‥そうだね。また来年もここで桜見ようね』
僕はその約束を守ってきたのに、君のほうが破るなんて…そんなの許さないよ。
どうして気付かなかったんだろう。あらかたの敵は片付けたから、油断していたのかもしれない。気付いたときには敵の銃口はにむいていた。
「!」
あくまでも天下のボンゴレの一員。は僕の声に反応して素早く相手に銃を向けた。鈍い銃声が冬の乾いた空気に響き渡る。響いた音はずっと僕の耳に残っていた。重く、重く。敵は頭を撃ち抜かれていて、すでに息絶えていた。しかし、弾はにも当たっていた。
の体から鮮やかな赤が散る。スローモーションで倒れてゆく。全力で走ってもまったく距離が縮まらない。今まで、こんなに時の流れをもどかしく感じたことがあっただろうか。僕が駆け寄る時には既に床に大量に広がっていた。横になっているを抱き寄せた。あんなに綺麗な髪も、白い肌にも、見たくもない赤がべっとりとついていて。手に生温いの血がこぼれてくる。凍てつく空気のせいか、それとも体温が下がってきているのか。は驚くほど冷たかった。は苦しそうに目を瞑り、肩で息をしていた。
「…恭弥…」
周りに少しでも物音が立っていたら聞こえなかっただろう。蚊の鳴くような小さな声でが呟いた。
「。喋らなくていいから」
僕の言葉に首を振る。もう、間に合わない と言うように。そして目をゆっくり開けて、その瞳に僕を映した。周りには、誰もいなくて、まったく音の無い静寂の世界。世界に僕と以外には誰もいないような錯覚に陥るほどの。そして、彼女はその静寂の世界にぽつりと音を紡いだ。
「恭弥…ケガ、無い…?大…丈夫?」
こんな時まで。自分が死にそう時まで、人の心配をするなんて。じわじわと広がっていった血で、の服はもう既に元の色を失って、真っ赤に染まっていた。
「君、 本当にバカだよね」
「‥うん、ゴメンね。恭弥…」
は途切れ途切れに答える。でもはゆるく笑っていた。もはや痛みも感じないのかもしれない。僕の言葉に呟くようにひとつひとつ答える。
「いつも危なっかしくて」
「‥うん」
「馬鹿みたいにお人好しで」
「クス‥うん」
「――ホント‥バカだよ…」
「…うん…ゴメン。ゴメンね。
だから――泣かないで。」
が僕の頬に撫でるように触れる。
「何言ってんの。泣いてないよ」
僕の言葉に目を細めて笑う。そうやってずっと、笑っていなよ。笑って、僕の傍に居てよ。
「私が泣いてる時は何も言わないで、いつもこんな風に慰めてくれたよね。
こうやって思い出すと、いつも恭弥に助けてもらってばっかだね」
―――…違う。
「恭弥が今まで守ってくれたから、ここまで生きてこれたんだよね」
―…違う。
「…ありがとう。恭弥」
違う。
僕は彼女を守っているつもりで、結局最後は守れなかった―…
「あぁ、見て。恭弥。
雪が舞って、まるで桜みたい。」
は一筋の涙を流して、笑う。
花が開くように美しく、花が散るように儚く
――――――笑う。
最後に聞いた君の声は残酷な程、
『アイシテタ』
綺麗だった。
君がいないなら
こんな世界、滅びたらいい
(舞い落ちるのは粉雪か、桜か。)
あとがき。
暗っ!!( ̄□ ̄;)