先生の言葉が子守唄に聞こえる6時間目の授業。
右側の窓から体育の授業をしている生徒の声が聞こえる。
かわいそぉー、こんな暑いのに。とか思いながら授業を受ける一般的(?)な
女子中学生です。まぁ…一般的な女子中学生なので…
それなりに好きな人がいたり…します。
「山本!寝るな!」
先生に怒られている彼は、山本武。
ファンクラブまであるモテモテ人間。
「獄寺!机から足を下ろせ!」
こちらの彼は、獄寺隼人。
ファンクラブまであるモテモテ人間。
ちなみに私の好きな人は山本くん。
野球やってて、爽やかで、かっこいいしかわいい。
アイドルみたいに山本くんが好きな人はたっくさんいる。
真剣に好きな人もたっっくさんいる。私は真剣だったりする。
聞きなれたチャイムが鳴り響き、授業の終わりを告げる。
あぁー… 終わったぁー…。5分休憩、帰り学活、号令。
規則正しすぎるくらいに事は進み、やっと帰れる時がやってきた。
「、早く帰ろうよ」
「ん、ごめん。ちょっと待って…ってあれ?
なっちゃん今日掃除当番じゃない?」
「今日は掃除ナシ。さっき先生言ってたでしょ」
「あぁ そっか」
かばんの中に筆箱を放り込む。…教科書なんて持って帰りません!
教室から出ると山本くんが獄寺くんと沢田くんと3人で下駄箱へと向かっていた。
「じゃあね!山本くん!」
「おう また明日な!」
気さくで話しかけやすいところも好き。だからいつも帰りは声をかける。
でも、それだけ。…すいませんね!それだけですよ!!
帰宅し家でごろごろとしていたら、時計に「塾に行く時間だ」と宣告された。
重い体を引きずり外へ出てとろとろと歩く。めんどくさぁい…
とか思いながら歩いていると、ぶかぶかのパーカーを着た少年が視界に入る。
あれは…沢田くん?うん、絶対そうだ。あの女の子みたいな体つきと
茶色いつんつん頭は沢田くんだ。後姿だし遠いけどわかった。
まぁいつも山本くんの隣に居るから見慣れてるしね。
「ほら!やめろって!あっち行け!」
なにしてるんだろ…?変な人に見えるから同じクラスの者として
独り言は控えていただきたい。
「うぅ…っ!」
「あ…っ!泣くなって!
ね!大丈夫だから!今追っ払うから…」
あれ 独り言じゃない?
沢田くんは小さな男の子のために猫の喧嘩を止めようと必死だった。
男の子は猫の喧嘩が怖くてその道を通れずにいるらしい。
一発で状況を把握できた
男の子をあやした後にキッと猫を睨みつけ―――
「こら!どっか行けって!!」
なんだか迫力が違った。「ダメツナ」なんてあだ名がつくほど
弱虫な沢田くんが、あんな風に怒るなんて…。猫は驚いてすたこらと逃げていく。
「もう大丈夫だよ。自分の家わかるか?」
「うん!ありがとう」
別に話しかけてもよかったんだけど
なんとなく 道を変えて塾に行った
塾の授業中もさっきのことが気になる。
私、持田先輩と沢田くんの対決見なかったからなぁ。
すんっごい興味なかったし…話しで一部始終を聞いてたけど
ただの笑い話しだと受け止めていた。でもあんな風に
猫を追っ払ってあげたりするんだなぁ…。実はそんなにダメじゃないじゃない?
「!聞いてるかぁー?」
「あっ聞いてなかった」
「お前素直すぎだよ」
授業本気で聞いてなかった。
先生とのやり取りでみんなのウケを取ってしまった。
…ま、いっか。気にするべからず!!
次の日。うちのクラスは月の始めに席替えをする。くじ引きで決めるもんだから大騒ぎだ。「席替え」なんてものはいわばイベントのようなもの。「運命の日」なぁーんて
呼んじゃってる女子もちらほら。私もその女子の一人だけれど…。
その運命の日でことごとく運がない人間なんだ、と自分というものを理解した。
つまり、山本くんと隣になったことは無い。あぁ…神様…今回は是非隣に…!
順番で教卓まで行き、くじを引く。大雑把に切られ折りたたまれた紙を
ゆっくりとあける。「15」とそこに記されていた。や…山本くん、何番かな…?
「ほい 席移動してぇー」
先生の言葉を聞いていっせいに机が移動される。
一時教室内はぐちゃぐちゃになったがすぐにキチンと並んだ。
………なんでよぉ、また隣じゃなかったぁー!!
ちなみに隣は
「十代目!
今回はそちらですか!」
「うん 後ろの方でラッキーだよ」
沢田くんです。び…びみょー…。
でもこの間の猫の一件があるし、まぁいいか。
今日は5時間授業だったので、帰り学活してはいさよーなら。
塾もなかったしなっちゃんの家にそのまま遊びに行った。
それからも普通に日々は過ぎ月の中旬となった。
「なっちゃー…ん、席替えしたい…」
「ってばまたそれ?もう少しで夏休みなんだし
まだまだだって言ってるでしょ!」
「いいじゃん!言うだけタダよ!
あぁーあ!早く席替えしたいよー!!」
「って毎回失敗してるじゃない?
つまりずっとあんたの嘆きを聞いてるんだから!
まったくあたしの身にもなってよ」
くそぅ。自分は彼氏いるからって…
コイツの彼氏多校だからクラスの席替えは興味ないんですよ!
「そりゃ山本と隣になれないのは残念だと思うけど…
ここまでダメだと…諦めた方がいいんじゃない?」
「な…っ!?バッ…バァーカ!!!
バーカ バーカ!!」
「あはは!じょーだんよ、冗談」
沢田くんはあの日猫の喧嘩を止めてたりしたけど、それだけ。
他にその後何をしたわけでもない。あれはなんだったのかな?
とか思いながら月日は流れ、とある日のこと。
ガサ……
ガサガサ…
………?
……ガサガサガサ!
消 し ゴ ム 忘 れ た !
うっわー、最悪!ちっちゃい事のようでおっきい事なんだよねぇ
消しゴム忘れるのって…あぁ…今頃机の上ねmy消しゴム…。
消しゴム2個持ってる人なんてそうそういないし今日はシャーペンの上についてる
消しゴムで乗り切ろう。でもコレ嫌いなんだよね、消しにくいし…
無駄に頑張って授業を受けているとき右側から男の子の割りに高い声が聞こえる。
「ねぇ さん」
沢田くんだ。授業中に話しかけてくるなんて珍しい。
ってか普段でもあんまないか。
「なに?」
「もしかして 消しゴム忘れた?」
何でわかったんだ…?ガサガサ筆箱あさってたからかな
「うん ノリで」
「は?」
おっと変な発言しちゃったぜ
「…あの よかったら半分あげるよ」
「え!?いいよそんな!」
おーい、人の話し聞いてますかー?
お構いなしに自分の消しゴムを半分に切り出す沢田くん。
「はい」
「う…ごめんね。ありがと…」
たれ目の顔がにっこりと笑った。
沢田くんのイメージ
1. 運動ダメ
2. 勉強ダメ
3. 弱虫
うん!ちょー失礼!!でも今は
4. やさしい
が加わった…かな。あと3.は削除かもしれない。
「はい」
「?」
授業終了の号令がかかってすぐに隣のつんつん頭に話しかけた。
「昨日はありがとう。これ、新しいの買ってきたの。貰って?ね?」
「えっ いいよ」
「いいの!貰ってってば!私にも良心ってものがあんの!」
「…ありがと」
「消しゴム」をきっかけに、沢田くん達と話しをするようになった。
「、最近席替えの嘆き言わなくなったね」
「へぇ?ひょーかな?」
もごもごと食べながら話すと汚いと注意をされた。
ごもっともです!
「沢田とよく話してるし。なぁーんか怪しいぞ?山本のことは諦めたの?」
なっちゃんはニヤリと笑う。
「…諦めたんじゃないよ。気持ちが変っただけ!」
「へーぇ、そーなんだ」
「いいでしょ!別に!」
なっちゃんとは幼馴染で、なんでも本当のことを話す。
だから私の恋バナは全部知ってるので今さら隠すこともない。
「あんたも物好きねぇ。あっ、そこに沢田いるじゃん。話しかければ?」
「えー?んー じゃあ…
ねぇ!沢田くーん!」
「ぇ?なにー?」
「ジュース買ってこーいっ!!」
「なんでだよ!やだよ!」
「ちょっ!なんでそーなんのよ!」
なっちゃんが小声でツッコむ。
「あはは!じょーだん!」
「!冗談でも許さねぇぞ今の発言!十代目に謝れ!」
「ジョークの通じない男がいるわ!」
「うわっなんだアイツ!めちゃめちゃうざいですよ!」
「まぁまぁ」
この状況をにこにこ笑顔で見ている男の子が一人。
山本武くんです。彼は気づいてるっぽい。「今」の私の気持ちに。
毎日山本くんは私の視界の中に入ってる。でも、視界の真ん中に居るのは
その隣の小さいつんつん頭の方。そのつんつん頭と授業中話したりしてるから
成績はトップシークレットとなった。
「最悪!明日から夏休みなのにこれじゃ家帰れないよ!
もー沢田くんのせいだからね!」
「俺!?」
「てめぇ自分がバカなことを十代目のせいにすんじゃねぇ!!」
「うるさい!」
「ははは!みんな元気なのな」
っていうかさ、山本くんって人のことはよくわかるのね。
自分のことはさっぱりなくせに…。
「お詫びに帰りにアイスおごってください」
「ふざけんじゃねぇぞ!!」
「ごめんね。この子が非常識なのは昔からなの」
「あはは……」
「おごるおごらないは別にして、アイス食べに行こうぜ」
「よし!アイスだぁー!」
最近前より毎日が楽しいです。沢田くん達と話すようになったのももちろんあるけど
私、山本くんの事はファンみたいに好きだったみたい。結構ショックだった…
でもよくよく考えると、芸能人見てる感じだったかもって思ったの。
これが判明したのはあのたれ目で背の低いつんつん頭が気になり始めたから。
いつのまにか、あのつんつん頭に私の想いは向いていた。
「おいしー」
帰り道。私たちはお店に寄ってアイスを買った。
もちろん、おごってなんかもらっていません。
「あっ十代目!それ当たりじゃないっすか?」
「ホントだ!めっずらしー!オレ当たりなんてそうそうでないんだ」
「見せて見せて!ホントだぁ初めて見た!」
「ぇ それマジ?」
「大真面目です」
じぃっとアイスの当たり棒を見つめる沢田くん。
かわいい…。するとその当たり棒が私の目の前にやってきた。
「さん これあげるよ」
っ!?
「え!いいの?」
「うん。オレお金あんま持ってないからおごれないけど…これならあげれるし」
「あっ…りがとう!」
日に日にこの沢田くんへの想いが強くなることを感じる、
中二のある暑い日のこと。
あとがき
コレを豆子が読んだ数日後、豆子は消しゴムを忘れました。(リアルに)そして「ちっちゃい事のようでおっきい事なんだよねぇ消しゴム忘れるのって…」と言ったので私は豆子に消しゴムを半分あげました。その数日後豆子は新しい消しゴムをくれました。「私にも良心ってもんがあるのよ!」と言っていました。(もちろんその前に私は一回拒んだ)
…えぇ、ただそれだけですとも。