2年A組 獄寺隼人。
何がどうしてそういう経緯にいたったかはわからないけど、その人が私の想い人。いつも怒ってるみたいだし。怖いし。目つき悪いし。ってのが獄寺くんのイメージ。だから、話した事を数えてみても片手でこと足りるくらい。(話したって言っても「今日、日直だから日誌だしてね」っていう程度のもの。)
何で好きになったのか、本当にわからない。
ある日の休み時間。獄寺くんを何となく目で追っていた。いつからか目で追っていた。あまりに自然に私の視界にいる。既に当たり前のようになってる。獄寺くんはいつものように沢田君になんか話していた。びっくりした。獄寺くんがあまりに楽しそう笑ってるから。
獄寺君は沢田君のことを相当慕ってる。何かあるたびに「十代目!!」って。(十代目って何?)沢田君には見たことも無いような最上級の笑顔を向ける。いつもみたいな眉間に皺をよせた不機嫌そうな顔ではなくて。そうか…獄寺君って笑えるのか…。なんて失礼な事を頭の隅で思った。私は別に自分に向けられてる訳でもないのに、なんだか恥ずかしくてまっすぐ見れなかった。獄寺君の笑顔が自分にも向けられたらいいなと少し、思った。そして、結局獄寺君のこと好きなんだなぁ。としみじみ思ったりもした。
そんなことをぼんやり考えていたら、下の方からかわいらしい声が聞こえた。
「お前、獄寺が好きなのか」
「!?」
急に聞こえたことと、聞こえた内容にびっくりして、おもわず肩が跳ねた。慌てて見てみると、スーツを着て帽子を被った子供がいた。どこの子だろう?もしかしてお兄ちゃんとかお姉さんを探しに来たのかも。
「ぼくー?どうしたの?こんなところで」
しゃがんで子供と視線をあわすように話しかけた。でもその子はまったく聞いちゃいないみたいで、「お前の願い、叶えてやるぞ」なんて言いながら銃を額に突きつけてきた。
目をあけたらそこは保健室で、どうやらあたしはずっとベッドに寝ていたみたいだった。体は丈夫なほうだから、中学の保健室のベッドで寝るのは初めて。なんだか妙な感動にそのままぼーっとしていたら、シャマル先生の声がした。
「大丈夫か?」
「ぇ…あたしなんでここに?」
「教室で倒れたらしいぞ」
あぁ、そうだ。教室でへんな子供と会ったんだった。で、撃たれたんだっけ?願い叶えてくれるっていってたけど…。でもとくに変わった様子もないみたいだ。夢かな。確かに基本的に常識外のことばっかりだった。子供がスーツ着てたり、銃持ってたり。
「あの…すみませんでした。わざわざ運んでいただいて」
「あぁ 俺じゃねーよ。隼人が運んで来たんだ」
「はやと…?」
「獄寺隼人だよ」
獄寺君!?何で獄寺君の名前がでてくるの?ってゆーか獄寺君にも優しいところがあるんだ。(沢田くん関係以外で)シャマル先生は名簿をパラパラめくりながら「ちゃん、と…」と私の名前を確認していた。
「ちゃん、隼人のコレか?」
と先生が小指を立てて 突然聞いてきた。
「・・・は?」
「彼女か?ってことよ」
あまりに突拍子もないからわからなかった。頭の中は完全に混乱状態。ただ先生の小指を見て固まっていた。それでも動揺がわからないように答える。
「…ありえません、から」
「そうか?じゃなきゃ、あいつがわざわざ運んだりするかねぇ…
まぁ、違うならいいか。おじさんとチューしよう」
何故。…さすがに引いた。いわゆるドン引きってやつ。
――――がらっ
そこに噂の(?)獄寺君が入ってきた。一瞬、獄寺君が目を見開いて動きを止めた。誰でも生徒にキスしようとしてる保健医をみたら普通そうなるだろう。
「ッてめー!!何してやがる!!」
「チッ うっせーのが来たな。何の用だ。怪我なら女子しか診ないぞ」
「ちげーよ。おめーに用はねぇ」
そう言うと獄寺君は、私の手をとって引っ張っていった。
「うふぇ!?」
いきなりのことに出た声が獄寺君に聞かれていないことを願った。保健室から出ると、獄寺君はものすごく心配そうな顔をして私に尋ねた。
「大丈夫ッスか?」
本日何度目かのびっくり。理由は二つ。一つは私を心配してる?こと。しかも敬語使われたし。二つ目はすごく心配してる顔だけど、すごく…優しい顔をしてること。何か返事しなきゃって、しどろもどろになりながら答えた。
「大…丈夫…です」
「すみません…俺というものがついていながら…!でも、ご無事で何よりです!」
なんだ…?この対応のしかた…。
なんかこの獄寺君…沢田君と話してる時みたいな…
「…十代目?」
やっぱりーーー!!「十代目」って私に言ってる!?周りを360度見回したけど誰もいないから、やっぱり私に言ってるんだろう。私が知ってる十代目ってのは沢田君で(何の十代目かは知らないけど)少なくとも私じゃない。廊下の突き当たりにある鏡の前まで走る。まさかと思って鏡を覗いてみたけど、映った姿もちゃんと自分だったから、よく漫画とかにある体が入れ替わったりってわけではなさそう。でも十代目って呼ばれてるし…。
……だめだ、頭が混乱してきた。
「十代目…大丈夫ですか?」
「あの…獄寺君…」
「のど乾きました?何か買ってきましょうか?」
「いや…大丈夫です」
あとから追ってきた獄寺くんがいろいろ気遣ってくれるのが、逆に申し訳ない気がした。一刻でも早く廊下から立ち去りたい。こんなところ人に見られたら、私の学校生活は色々と終わりだ。
沢田&=十代目
なんて公式が知れ渡ったら、クラスの人に絶対変な目で見られる…!!
「獄寺君…屋上行かない?」
今は実は授業中。クラスのみんなはまだ授業を受けてる。
屋上には誰もいないはず。
「十代目のお望みとあらばどこまででも!」
…いや…屋上でいいよ…。
どーしよー…。獄寺くんは私を十代目、もとい沢田くんと勘違いしてるようなかんじ。
壮大な勘違いだ。屋上に着いた私達は、何をするでも無く、ただぼーっと空を見てた。
雲が流れていくのを「今日は雲の流れがゆっくりだな」なんて眺めた。本当は今頃、黒板でも写してるはず。堂々とサボれるって、なんか妙な優越感。しかも、隣には獄寺くん。…嬉しすぎる。
屋上に来たのは、とりあえず獄寺くんの私に対しての態度が直るまで仕方なく。というのはウソじゃないんだけど。でもそれ以上に、正直こうやって一緒に居れることが嬉しかった。
だからこの時間ができるだけ長くなればいい。そんなことを考えている私はなんて打算的な人間。思いに耽っている私にふいに獄寺君が問いかけてきた。
「何すか?」
「え…?」
それはこっちのセリフだ。いきなり何?
「今、名前呼びましたよね?」
え。呼んでた?だとしたら、無意識だ。
獄寺くんのことを考えていたから口にでてしまったようだ。正直すぎる自分の口に泣きたくなった。
ヤバ…恥ず…。
「いやぁ…そのー…何て言うかー…」
「?」
なんとか誤魔化さないと!!人間って必死に考えれば考えるほど頭が回らなくなる。首から上に血が集まっていく感覚。気持ち悪くなる位に顔が熱い。
「ずっと黙ってたら暇だよね。ゴメンね、付き合わして!」
ちょっと苦しいかな…?なるべく笑顔で言ったけど多分ひきつってる。まだ顔の熱はひかない。それどころか、首にまでそれが広がってきた気さえする。獄寺君は少し目を見開いて私を見た。なんだかいたたまれない気分になってきた…。
「そんな事ないっす」
優しい声でそう言いながら、見開いてた目を今度は柔らかくすっと細めて笑った。顔を傾けると、きれいな銀の髪がきらきら太陽に輝いた。
「あなたのそばにいてあなたをお守りするのが、俺の右腕としての役目ですから」
綺麗に笑った獄寺君は、獄寺君が好きな私にとっては眩しすぎた。…眩しいはずなのに、金縛りみたいに目をそらせずにいた。息が詰まる。どのくらい経ったか。実際は一瞬かもしれないけど、息が止ってこのまま死んでしまうかと思った。
「願いは叶ったようだな」
そして、どこかで聞いたかわいらしい声が、あのスーツを着た子に撃たれたときみたいに、聞こえた。
「そろそろ時間切れだ」
そして、また意識が、沈んだ。
目をあけたらまわりを柔らかそうなカーテンが囲っていた。枕のカバーもシーツも家のベッドとは違ってちゃんとパリッとしている。保健室で、あたしはまたベッドに寝ていたみたいだった。
「……夢…?」
なんて恥ずかしい夢を!! うーわー恥ずかしー…。
さっき見た夢のとき程では無いけど、顔にまた熱が集まる。でも、夢でよかったかも。現実だったら恥ずかしすぎる。屋上で見た(以前だったら想像もつかなかった)獄寺君の優しい笑顔を思い出した。沢田君はあんな笑顔を毎日見てるのか。
…いいなぁ。
男の子に嫉妬するなんて、あたしヤバいかも。でも、もし万が一、あの人のトクベツになったら、またあの笑顔が見れる?今まではただ好きなだけで、付き合ったほしいとか考えたこともなかった。
でも。
でも、またあの笑顔が見れるんだったら、あの人の『トクベツ』になってみたい。
「おー お前また倒れたのか」
シャマル先生の声で現実に引き戻された。
「ってゆーか さっきのやっぱウソだったのねー…」
「な、何がですか?」
先生が嘆いてるのを見ながら、自分が何をしたか思い出そうとした。
私、何かしたっけ!?
「やっぱ隼人の彼女なんだぁ―…」
「はいぃ!?」
「だってさっきチューしようとしたら隼人が怒って連れていったじゃん」
それは、うちが十代目と勘違いしていたからだと思うのですが。
―…ってゆーか夢じゃなかったのか。
恥ずかしさで死ぬかと思った、
ある 水曜日の出来事。
あとがき。
確かこれはいつぞやの餅子の誕生日に贈ったモノです。
ごめんよ。こんなんで。
リボーンさんが使ったのは『すり替わり弾』です。
一時間くらいの間、獄寺くんのヒロインとツナに対する認識が入れ替わるのです。
期間限定の記憶改ざんってかんじで。
このネタ、思いついたときは「このネタはいいんじゃないか!?」と(あくまで自分のなかでは)
思ったんですけど…
自分の文章力の無さに脱帽。。。