窓からやってくる風に綺麗な黒髪を揺らす。
男のくせに美しいな、と、いつも思う。
私の「幼馴染」それと同時に―――
「何?なんか用?」
「なによ。用がなきゃ来ちゃいけないの?」
――――私の「好きな人」
「きょーちゃん」と呼んで十数年。
毎日毎日無愛想な態度をとり続けて十数年。
自分の想いが伝えられずに十数年。
とにかく、あの人との付き合いだけは長い。仕方ないけど
いつも同じような毎日だったりする。だけど、あの日だけは訳が違った。
「だから僕と付き合えばいいのに」
「…え?な…んで?」
「が好きだからだよ」
待って…この人…
自分がなに言ってるかわかってるのか…?
あなたが世界で一番
「毎日そんなに暇?今日塾は?」
「今日は木曜だよ!塾は月・火・金だもん!
きょーちゃんは記憶力が乏しいですねぇ」
「…邪魔するなら帰ってよ」
「そー言われるともっと居たくなる!」
にぃーっと笑って見せる私を見てため息をつくこの人が、私の好きな人雲雀恭弥。
「あ、さん。またいらしてたんですか」
「草壁さん!こんにちは。あ!ねぇ聞いて!
きょーちゃんってば若年性アルツハイマーかも!!」
「…え?」
「草壁 気にしないで」
「アルツハイマーは黙ってて!」
「…?いい加減にしないと「あー はいはい わかった!!」」
私はきょーちゃんが言い終わる前に言ってやった。
こんなのは日常茶飯事だ。
なんでこんな毎日なのかっていえば、私がきょーちゃんのことが
どのくらい前からか分からないくらいずっと前から好きだから。
でもきょーちゃんは私の気持ちを知らない。……たぶん。そんなそぶり見せたことないし。そして、絶対にきょーちゃんは私に興味が無い。
今まできょーちゃん一筋だったし、ここらで諦め付けとかなきゃと最近思う。
じゃないと一生この人意外好きにならないだろうから。
と、思っても…。自分の想いを伝える?まっさか!
絶対ムリ。
は不思議な女だ。
毎日飽きることなく応接室にやって来て、僕に散々話しかけて仕事の邪魔をする。
それに素直じゃない。なにを言いたいのかわからない時なんかしょっちゅうだ。
そう言うと絶対に「きょーちゃんに言われたくない」と言う。
不思議な女だ。
何を考えているのか全然わからない。あぁ、心が読めたら楽なのに。
そうしたら、の本当の気持ちがわかる。
僕の「幼馴染」それと同時に―――
「きょーちゃーん お腹すいたぁ」
「…ゴミ箱でもあさってくれば?」
――――僕の「好きな人」
「わぁー 冷たいヤツ!アイスクリームより冷たいんじゃない!?」
「うるさい」
けらけらと笑う無邪気な笑顔が、なんともかわいらしい。
そんな風に想い始めたのはいつからだろう?覚えてないな。
「ホントにお腹空いたなー…購買部行ってくるね!」
無言で彼女を見送る。
するとドアの向こうで話し声が聞こえた。
私は彼にいつも通りに無言で見送られた。そんなことはまったく気にならない。
「慣れた」なんてもんじゃないな…これが普通、これが「きょーちゃん」だから。
ドアを閉めたとたんに頭に浮かぶ言葉。あー、きょーちゃんかっこいー…。
………しみじみ思うと恥ずかしくなるなぁ。
「先輩!」
「っ!?なんでござんしょうっ!?」
にやけそうになる顔を必死で真顔にするべく下唇を噛んでいると、
誰かさんが呼び止めてきた。正味な話し…ちょっと焦った。
誰かさんとは同じ委員会の2年の男子だった。
「はい!あのー…ちょーっと用事がある子がいまして…」
「え なんで?」
「んー 用件は本人に聞いてください!」
そう言われて引っ張られるように校門のところに連れて行かれたら、
その用事のある子が待っていた。そして私がきょーちゃんに寄せている想いと
同じものを精一杯伝えてくれた。でもきょーちゃん以外は考えられないから――
「ごめん 好きな人がいるの」
断った。
初めての出来事だったので混乱している間に『ありがとうございました』と言われ
正気に戻った時にはあの子は走り去っていった。なんとも言えない気持ちになり
少し上を見上げると、目の端っこに大好きな彼が映る。見逃す訳ない。
いつからこっち見てたんだろう。今何言われてたかわかってるかな?
わかってて欲しくないなぁ。
「きょーちゃん!」と心の中で呼びかけ手を振ってみる
…シカトだ。きょーちゃんは応接室の窓からこっちを見ていた
「」
「なに?」
応接室に戻ったきょーちゃんは、一言で言うと機嫌が悪い。
「きょーちゃ「購買部行ったんじゃないの?」」
言葉つぶされた…。
混乱してたからそんなこと忘れて何も買わずに帰って来た。
「混乱して空腹だったの忘れたんでしょ」
うわぁ…、いつの間に読心術極めたんですか?
てかさっき何言われてたかわかってんじゃん。
「さっき何言われてたの?」
やめてよ、わかってんでしょ?
あなたに一番聞いて欲しくないのに。
「…関係ないで「ある」」
想像以上に機嫌悪いかも…。
「に…2年の…同じ委員会の子が告白してくれたの!」
「ふうん。で、どうしたの?」
「断った」
「なんで?」
なによ、あんたが好きだからよ。
「………、好きな人が……いる…から」
蚊の鳴くような声で呟く。
聞こえもしないような小さな声で。
「…?なに?」
「すっ好きな人がいるから!!」
頑張ってちょっと声を大きくしてみた。
なんだか心臓が飛び出しそう…。
「ふうん、誰?」
「なっ!?
いい言えるわけないでしょ!?」
「言ってよ。そいつ噛み殺しに行くから」
なぜ!?
「いやややや!そいつ絶対私に興味ないし!
そう!これっぽっちも!!」
「へぇ」
なんなのよ!人の気も知らないで…。
私が好きなのはあ な た!! 雲 雀 恭 弥!!
「だったら僕にすればいいのに」
「え?なにを?」
「だから僕と付き合えばいいのに」
「……え?な…んで?」
「が好きだからだよ」
待って…この人…
自分がなに言ってるかわかってるのか…?
「どうするの。付き合うの、付き合わないの?」
うわぁ…うわぁ…!
あ…頭ぐるぐるしてきた…!
「…帰る」
「どうして?」
「いいから帰るの!」
盛大にドアを閉め、自分がこんなにも速く走れたのかと思うような速度で
廊下を駆け抜けていった。頭の中はもみくちゃにされていた。
なんなの!?あの人!私がきょーちゃん一筋だったこと知ってるの!?
いや、でも…知らないハズ…。知らないフリしてた!? 演技ですか!?
あぁー!わっけわかんないっ!!!
…逃げたな。駆け抜けていく彼女の足音が聞こえる。
さっきのヤツの時は逃げてなかったのに。さて…。あの2年、噛み殺さなきゃ。
廊下を駆け抜けた時から、ずっとスピードはまったく落ちず
そのまま我が家に到着。するととたんに体がだるいことに気づき
混乱した勢いに身を任せ、体温計を引きずり出して計ってみるとなんと熱があった。
ベッドに倒れ込み、次の日は学校を休んだ。
「草壁」
「はい」
「は?」
「今日は学校をお休みのようです」
「熱?」
「そのようです」
ふうん。
次の日。私はいつもどうり登校した。何人も何人も友達が声をかけてくれて
嬉しく思う反面、一日中「あのこと」が気になっていた。
放課後。目の前にはいつも元気よく突き破るように開ける応接室のドア。
今日はなんだか違ってみえた。大きく、深呼吸をしてみる。
でも緊張はまったく解れなかった。緊張する…ってなんで緊張してんのよ…。
どんな顔しようかな…。恥ずかしさに負けて今日一日ずっと
きょーちゃんのこと避けちゃったし…。「告白の返事」ってこんなに難しかったのか。
たかが返事なのに。…たかが返事、されど返事ってやつね…。
…よし!今逃したら今日が終わるよ!行け!行くんだ!!
自分でも痛いなとは思うが、しっかりと言い聞かせた。
もう1度深呼吸し、いつもより重く感じるドアを開ける。
「きょーちゃ…」
恐る恐るきょーちゃんを見ると、ものすっごく機嫌が悪い。
思わず言葉をソッコーで飲み込んでしまった。一言でいうと、怖い。
「この前は逃げたね」
「………はい」
「そして今日はなに?1日中避けてさ」
「………」
「この間の冗談とか思った?」
それは…ちょっと思った。
「冗談じゃないんだけど。ずっと昔から言おうと思ってた」
死ぬほどうれしいです。
「で、は…僕のこと好きなの?嫌いなの?」
その発言を聞いたとたんに、一瞬で大きく息を吸うと
「はぁー!?何言っちゃってんのよ!!」
叫んでいた。
扉の前で縮こまるようにしていた私は、ずんずんときょーちゃんの前に進む。
「私がどれだけあんたのこと好きだと思ってるの!?
嫌いなわけないでしょバァーカ!!今日だって恥ずかしくって恥ずかしくって
何度学校を抜け出そうとしたことか!!」
「…ワオ、そんな事しうようとしてたんだ」
ちょっと茶化すようにしたきょーちゃんのかわいさはもの凄かった。
私は応接室のきょーちゃん専用の大きな机をありったけの力で思いっきり叩いた。
大きな音が鳴り、手がジンジンと痛む。
「いいわよ!」
「…は?」
「だから…付き合ってもいいっていってんの!!」
綺麗な目が、珍しく大きく開いた。でもすぐに表情が変ったことに気づく。
目を細めて笑う彼の顔に心臓が高鳴った。
「…前髪上げて」
「え?」
え…今のにコメントなし?うわ…むなしい…
………?机の下の方でやってるから見えないけどなんかペリペリと
何かをはがす音が聞こえる。するとベチッとおでこに何かを貼られた。
その何かはひんやりと冷たく心地いい。
「何?コレ」
「熱さまシート」
「きょーちゃん、私もう熱ないよ…?」
「ふうん。じゃあ予防」
「ね!きょーちゃん!私のことどー思ってるー?」
「………」
この 人を面倒臭そうに見ているまったくもって失礼なヤツは
私の「幼馴染」それと同時に―――
「…言わない」
「えぇー!」
――――世界で一番「大切な人」
この僕の発言に本気でがっかりしているまったくもって面倒臭いヤツが
僕の「幼馴染」それと同時に―――
「ねぇ」
「ん?なに?」
――――世界で一番「大切な人」
「好きだよ」
あとがき
コレは豆子さんが私の誕生日にリボーンのイラストをくれたので、そのお返しにと
「雲雀さん夢・ヒロイン幼馴染設定」というリクエストを受けました。
それでできた作品がコレです。お返しがこんなんで申し訳ありません…。
イラストはとてもかわいかったです!並盛3人組がケーキを作っている絵でした。
いつかアップできたらいいなと思います。