ずるずるカップラーメンをすすっている人もいれば、パンにかじりついている人もいる。
いつもみんなココに溜まってから帰るのかぁ、と周りを見渡す。
大した物は存在しない、ただのコンビニの駐車場。
どうもこんにちは。
珍しく遅くまで残っていたのでみんなと帰ることになりました、篠岡千代です。
「しのーか何買ったの!?」といきなり田島君に質問された。
「ポッキー」と言いながら田島君に一本手渡す。
もの凄いスピードでポッキーは田島君の口の中へ消え去っていった。
「しーのかは、極細派かぁ」
一瞬何を言っているかわからなかったけど、そうか、このことか。
私の手に握られているものは、『Pocky極細』。
普通のとは違う、真っ白な箱に沢山の細いポッキーの写真がプリントされている。
「田島君は普通ポッキー派?」
「うん!あの箱が赤い方!
細いのは食べた気しねぇーもん!」
へぇー、男子は普通のヤツの方が人気なのかな。
食べた気がしないっていうのは初めて聞いた意見だ。
でも普通派の人はそこが一番の理由なのかもしれない。
車とバイクと西浦野球部の笑い声しかしない、
このあまり景気のよさそうには見えないコンビニの駐車場に
ある議題が投げかけられた。
「ねぇみんな!普通ポッキーと極細ポッキーどっちが好き!?」
突然の議題に関わらず、みんなが一斉にうーんと唸り始めたときに
「俺は極細ポッキー!」と水谷君が手を上げた。
その声は100m走のスタートを知らせるピストルのような役目を果たした。
「んー、俺も極細かなぁ」
「えっ?俺は普通のポッキーのがいい」
「どっちでもいいだろ、んなの」
「それなし!どっちだよ」
「まぁどっちかって言えば普通の方か…」
「俺…は、普通の方…だ、よ!」
普通派
田島君、阿部君、花井君、三橋君、泉君、巣山君
極細派
水谷君、栄口君、沖君、西広君、篠岡
と、なりました。五分五分だなぁ…。
「ねぇ何で!?何で細っこいのがいーの!?」
いきなり極細派に意見を求める普通派代表、田島君。
「私は食感が好き。ぽきぽきするの」
「わかるわかる!俺はね、あれ!沢山食べた気ぃするから!」
普通派は「水谷はアホだ」と連呼。それに怒る水谷君。
それをさえぎるように「俺は普通ポッキーに飽きたからかなぁ」と栄口君が言った。
それは私も同感。食感が好きっていうのも、前の食感に飽きたからだと思う。
「じゃっ!じゃあ何で普通ポッキーがいーんだよ!」
普通派に意見を求めだした水谷君。仕返しのつもり…?
すると泉君が面倒くさそーに「細いのは食べた気がしない」と答えた。
さっき田島君が言っていたのと同じだ。やっぱ男子はそうなのかな?
そんな風に思っている間に、「細いのは食べるのがめんどい」と言う阿部君に
花井君は「わかる。俺3本くらい一気に食うかんな」と同意した。
「つーかさ、何で細いのができたんだろ?」
私たちの議題は変更された。その名も『極細誕生の理由』。
酷いくらいの練習を終え、物凄く疲れているはずなのに
みんながちょっと真剣にポッキーについて考えている…。何だか和むなぁ、こういうの。
「あ!わかった!あごの悪いお年寄りにも食べられるようにしたんだ!」
田島君の世紀の大発明をしたようなパァっと光る顔が眩しい。
あぁ、みんな反応に困ってるなぁ。
「そう、だ、ね!田島君…は、すごい!」と関心する彼、三橋君を一人残して。
蒸し暑い空気が流れる空に笑い声が響いた。
「案外そうだったりして」と私が言うと「えぇー、ないだろー!」と何人かが声を上げた。
突然、くるっと栄口君がこちらを向いた。
ポケットからきちんとたたまれパンの袋がちらりと見える。躾…なんだろうなぁ。
「ね、篠岡は極細でしょ?女子はみんな極細派なの?」
「やー…。違うよ、極細を思いっきり否定する子もいるもん」
「なぁ花井!世間様はどーなんだ?」
「水谷はさぁ、なんで俺に聞けばわかると思うんだよ」
「何でも知ってそーだからぁ」
「知らねぇよ」と一言いって残りのラーメンのスープを飲み干した。
ここで、みんなの思考回路が一つになった。そして代表して泉君が
「話しになんなくね?」
言った。
一斉に自転車のストッパーを足で蹴飛ばし、ガションガションと音が立つ。
そして少し歩き、上り組みと下り組みに分かれて手を振った。
「明日!各クラスでどっちのポッキーか調べるの忘れんなよー!!」と田島君が最後に叫んだ。
「ま、覚えてたらなー」
「絶対だぞー!?」
前を向いて、歩き出す。話しに夢中で気がつかなかったけど、
真っ暗な空に星が見事な飾りつけをしていた。
熱風が頬をなでる。
まだ夏は、始まったばかりです。
あとがき
私は極細派です。
このお話は
「ヒロインの名前が出ない」「ヒロインが喋らない」
どころの騒ぎではありません。
ヒロインがいない。
ですので、これは二次小説ですねぇ。
さっきも言ってたけど。