「あぁー、彼女ほしー!」
始まりは水谷くんのその一言。別に、人の話の話題に文句言うつもりもないし、そういう話題ってフツーに出てくるとおもうけど…
学校でも有名な野球部の練習。朝5時から夜の9時までのキツイ練習のあと、みんなが着替えてるときに、疲れを吐き出すように、声が大きいわけじゃないけど、水谷くんが言った。そして、水谷くんが隣にいた栄口くんに「彼女欲しいよなぁー」と話かけたとき、私の心臓が(比喩でもなんでもなく)飛び跳ねた。
「(わ、私、一応…栄口くんの“かのじょ”なんだけどなぁ…)」
なんだか、その事実に今更だけど途端に恥ずかしくなった。嬉しくて、にやけたくなるような。恥ずかしくてそわそわして、居心地の悪いような。なんとも言えない心境で下を向いていた。
栄口くんとは二週間くらい前から付き合ってる。告白は、栄口くんから。でも、きっと先に好きになったのは私のほうだと思う。改めて聞くのも恥ずかしくから、実際にどうなのかは知らないけど。栄口くんの告白は「オレ、のこと好きだよ。」となんともシンプルかつストレートなものだった。そして、その直球は見事にストライクだった。放課後の誰もいない教室に響く声。今でも思い出すだけで、しあわせが溢れる。おもわず、にやけたくなる程の。
と、まぁ そんなこんなで付き合うことになったんだけど、多分、この事実は私と栄口くんの二人しか知らない。隠してる訳ではないけど、聞かれてもないのにわざわざ自分から言うのも…ってかんじで今まで誰にも知られないままできた。
「(でも、今更恥ずかしくて言えないよぉ…)」
ちっちゃくなりながら、はぁ、と溜め息をついた。でも栄口君が言ったせりふに思わず、息を止めることになるんだけど。
「あー でも俺、彼女いるし」
「「「えぇぇぇぇぇぇえっ!!?」」」
おもわず、他のみんなと一緒に叫んでしまった。
えぇ!言うの!?言っちゃうの!?いや、別に嫌な訳じゃないんだけどー…
だって、だって、そんなの―――…恥ずかしすぎる!
私が一人で葛藤してるうちに、どんどん話は進んでいた。
「いつからだよ!?」
「誰!?」
「西浦の子!?」
みんな、目を見開きながら聞いてるのに、栄口君は動揺する感じもなしに笑ってた。(でも、その笑ってる顔が好きなんです。)
「え?誰って…だけど」
「「「・・・・・。」」」
今度はみんな、いっぱい いっぱい溜めてから、
「「「…っえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!?」」」
叫びました。
それまで栄口君に向かってた質問の嵐が私に降ってくるのは当然のことで…。そして、だれも知らないと思っていたのに、男子が着替えるのを一緒に待っていた千代ちゃんが「私は知ってたよー」といつものほんわかした笑顔で言われて、びっくりしたのと同時に恥ずかしくなった。どうして、わかったのか訊くと、「マネジだから知ってるんだよー」と答えが返ってきた。うーん…マネジは関係ない気がするなぁ…。
そんな会話をしているうちに、栄口くんはすでに着替え終わって帰る支度をしていた。厳しい練習が終わった後だから、みんなゆっくり着替えてるのに栄口君はありえないスピードで着替え終わっていた。(でも実はまわりが遅いだけで標準くらいだけど)
そして、私の手を引きながらみんなに「じゃあ、オレ先に帰るから!」って笑顔を向けた。
その帰り道、栄口君が自転車を引いてる横を歩きながら、みんなの顔を思い出した。なんかみんな本当に驚いてたみたいだったな…。田島君は「どーして!?」って一番回答に困るような質問をしてくるし、三橋君は…「う…!?」とか「ぁ…っ」とか言ってた。よくわからないけど…多分あれは驚いてたんだ。うん、きっとそうだ。阿部君や、泉君ですら驚いた顔をしてた。
あとで聞くと、男子のなかでは唯一、花井君は知っていたみたいで、本人いわく、「見てればわかる」そうです。なんと言うか、さすがキャプテン。
――栄口くん、どーして、急にあんなこと言ったの?
付き合ってるのを知られるのが嫌なんじゃないんだよ!?栄口くんは、私には不釣合いなくらい優しくてかっこいい!からむしろ自慢したいくらいなんだけど…
―――っ恥ずかしいし…言わなくてよかったのにぃ…!
そんなことを考えながら、ぼーっとしていると栄口くんの声で現実に引き戻された。
「、さっきの言わないほうがよかった?」
「えっ?」
真顔で、じっと真っ直ぐ目を見て聞かれて、なんだかドキッとした。心を見透かされたのかとか、ありえないことが頭に浮かんで、慌てて答えた。
「そんなことないよっ!私は、全然へーきっ。」
ただ少し、いや、だいぶ恥ずかしかったけど。
「そっかー、よかったぁー」
あ…、今の笑顔。
??すっごい好きだぁ…。
それだけでさっきの相当な恥ずかしさも少しの不満も全部ふっとんでしまった。
でも…、
「でも…、栄口君よく恥ずかしがらずに言えたよね…」
「いや?そんなことないけど…」
「うっそだぁー。だっ、て……」
途中まで言いかけて栄口君を見て目を見開いた。夏とはいえ、この時間帯はだいぶ涼しいはず。そのはずなのに、栄口君の耳も、顔も真っ赤だった。
「実はさぁ、けっこー恥ずかったんだよね」
栄口君、笑いながら言ってるけど、顔、真っ赤だよ?
つられて、私も顔が熱くなるのがわかった。きっと真っ赤であろう私を見て、さらに栄口くんも熱をあげたみたいで。自分の真っ赤な顔が恥ずかしくて、気まずくて。お互い少し下を向いた。
「……あぁーアイスでも買う?」
「そうだね…!コンビニ近いしね!」
涼しい夜に、熱い手で食べるアイスは、
シ ア ワ セ の 味 。
(がりがり君おいしーよ!栄口くん!)(ほんと?ひと口ちょーだい。)(えっ…!!(それって間接キス…。))
あとがき。
にしうらのあのノリが好きです。
栄口くんはわりと照れずにさらーっとあんな感じで言いそうだなーと。
それで、あとで思い出して「あのセリフくさかった!?」とか思って照れてればいいよ☆←