「――ッ!おい三橋!危ねェだろーが!」
「あっ!ご…ごご、ゴメンナサイ…」
試合の帰り道、車にはねられそうになったところを花井くんが助けてくれた。
怒られた…。嫌われたかなあ?ちゃんと、しっかり歩かなきゃ…。
でも、さっきの人がどこに行ったか気になる…な。そう思って振り返ると
もうその人はいなかった。どこにいったんだろう?さっきの人は、確かにあの人だった。
「ほら三橋!前向けー」
あっ栄口くんの声だ。ちゃんと前、見なきゃ…。前を向きなおしたのはいいものの、またあの夢が頭をよぎった。自然と、ゆっくり、あの日みた夢を思い出していた。
…あぁ、やっぱり不思議な夢だったなあ…。あれは初めて西浦のグラウンドに足を踏み入れた前日の夢だった。今、一緒にいるみんなと初めて会う日の前日に見た、夢だった。
「少年!どうかした!?」
そう、突然言われた。俺は明日を不安に思いながら眠ったはずだったのに。
毎日何かしら不安に思いながら眠る。ここ何年か、ずっと。
最近は西浦では野球をやらないと言い聞かせながら眠っている。でも今は森にいた。
360℃木で、俺がいるところはすっかり木がなくなっていた。そのすっかりなくなってしまっている部分は随分大きい。その中心には大きな切り株があった。その切り株の前に立つのは、俺よりは年上であろう女の人だった。
「おーい、少年!」
ぇ…話掛けてる。どうしよう、誰だろう、コワイ…。女の人はにっこり笑った。
その笑顔を見て、不思議と少し落ち着いた。吹いた風がたっぷりとかいた汗を冷やした。
また、その人が笑う。
「私、ってゆーの!」
「ぇ…あ、どう、も…」
俺よりは年上なんだろうけれど、その無邪気さで幼く見える。たくさんの飛んでくる鳥を手に乗せ、何匹かのリスを肩や頭に乗せている。その動物たちに「あの少年は誰だかわかる?」と質問する。あまり派手な格好ではなく、森にいてもおかしくないようなベージュやカーキ色の服を着こなしていた。森にそのまま溶けてなくなってしまいそうなほど。
「私、ココにこの子たちとずーっと住んでるの。ずーっとよ」
俺がその言葉の返事を懸命に頭のなかで検索している間に、また話し始めた。
「ここでこうして、この子たちといるのが幸せ。ここにいるから、もっと生きたい!って思うの」
そういうと、くるくる回りはじめた。ブーツなのになんとも器用に回った。
さんが1周回るたびに、木々の色が変った。季節が移り変わっているんだと気が付いた。物凄い突風が吹いたけれど、それを邪魔臭いとは思わなかった。とても不思議な光景に、目を見張った。飽きたのか、突然回ることをやめた。すると突風も止み、季節は秋でとまった。紅葉とイチョウがとても綺麗だ。
「少年はさあ。どんな時に「もっと生きたい!」って思う?」
初めて投げかけられた質問だった。「もっと生きたい」…?困ったけれど、一生懸命考えた。
もっと生きたいって…生きることをやめたくないってこと、で、…?生きるって何だろう?
俺これからもう野球やらないんだよなあ。今までそれだけが支えで、頑張ってきたんだから。でも、それがなくなったら?俺はどうして…何のためにこれから生きていくんだろう?
なんだかスケールのでかい考えになってしまったなあと思いつつも、答えを言った。
「もっと生きたいっていう、か…。野球がやりたくて、生きている。…のかも…しれな…ぃ」
「あはは!そっか!」
また笑ったあと、俺の前に近づいて来た。二重まぶたの大きな目の中心にはしっかりと
俺が映っていた。そして、ゆっくりと言った。
「頑張ってね、廉」
「…?ど、どうして、俺の名前…知ってる」
「の?」まで言えずに目が覚めてしまった。この驚きと後から沸きあがる切なさは
突然風船が割れてしまった時によく似ていた。瞬きを数回繰り返し、起き上がった。
そしてぽつりと声を小さく漏らした。
「…行くだけ、行ってみようかな。…野球部」
次の瞬間、お母さんが部屋に入っていた。もう目が覚めている俺を見て驚いていた。
森の中でのお話
あとがき
コンニチハ。
「世にも奇妙な物語」みたいなのを書きたかった…っていうか、
なんか不思議なのを書きたかったんです。
「世にも奇妙な物語」よりは格段に劣りますが…;
えー、この話で一番困ったのは初めての三橋夢なところです。
あのキョドリ加減が難しいのなんの!フツーに喋れよ み は し ☆
って感じでした。(えェー…
まあ一先ず、読んでくださりどうもありがとうございました。
これからも頑張ります!