「うわあ!ちょっとやだ、ネズミが!くびな…っ」
「はいはい、どれどれー?」
ひょいとネズミをつまみ上げ、掌に乗せる。逃げようとするネズミをもう片方の手で抑え、ボクの完全勝利だ。
「何でこれが怖いんだ、可愛いじゃないか」
ほら、と少し毛倡妓の方にネズミの乗った掌を近づけると、着物の袖で顔を隠しながら後退りした。
「怖いんじゃなくて気持ち悪いの!その毛並みとしっぽが本当にもう…!台所にいるだなんて衛生的によくないわ、総大将と若のお口に入るお料理を作るのに!」
「それはそうだね。じゃあ台所の掃除の続きはボクがするから、毛倡妓はお風呂掃除をしておいて」
ボクがそう言い立ち去ろうとすると、彼女はむすっとした顔をしていた。理由は、だいたい把握できる。
「この間のクリスマスパーティーで酔いつぶれた上に二日酔いで1日使い物にならなかった駄目男に、か弱い女扱いされたくないわ!」
ぷいっと横を向き腕を組んだ。本当に怒っているわけではなく、少し言ってやりたくなった、ただそれだけみたいだ。ボクは掌のネズミをあやしながら苦笑した。確かに今年のクリスマスパーティーも酔いつぶれた。だけど言い分がある。ボクだって自分からは飲んでいないのだ。みんなに良い具合に酒が回り始めた頃に、面白がって無理矢理飲まされる。
まあ、今さら毛倡妓に説明しなくともいいことだ。
「うーん、否定はできませんね。酒は、どうも弱い。でも若も楽しんでくれいたしいいじゃないか」
「なにそれ、またそうやって言い逃れするんだから」
12月25日の朝。
若の枕元には、例年のごとくプレゼントが積み上げられいた。
若は毎年25日の前の晩、つまり24日に皆が若の就寝時に忍び込みプレゼントを置いて行くのを知っておられる。それに気づかぬフリをして一夜を過ごすので、25日は寝不足でいらっしゃるのだ。それが辛いんだと先日ボクに打ち明けられていて、大変気の毒に思った。
だが、若の為にうきうきでプレゼントを用意する妖怪たちを止められず、今年も高く高く積み上げられた。
そして今年は、昼と夜、両方のリクオ様にクリスマスを楽しんで頂こうと幹部の中で意見がまとまり、昼からパーティーが始まった。
「どんちゃん騒ぎを絵に書いたような光景だったわよね」
「うん、夜が特にね…。今年は青田坊が一番飲んだかな」
恐ろしい程の盛り上がり。酒も食べ物もいくらあってもたりなくて、凄いペースで妖怪たちに吸収されていった。
そしれまた例年通り、出し物を披露し合った。小妖怪たちが皆トナカイの格好をして一芸を披露したり、(ジャグリングとか)またこれも一段と盛り上がった。
「んー、今年の出し物は全部凄かったけど、一番は雪女だよね、すごかったよなぁあれは」
「圧倒的よね、本当に。あの子もよくやるわ」
雪女の一発芸の映像を鮮明に再生しながら話していると、ご本人様が登場した。
「ちょっと2人とも、この忙しいのに話し込んで…ってやだネズミ!やめてよネズミ持って立ち話なんて趣味悪い!」
趣味悪いだなんて酷いなあ。さっきの毛倡妓と同じように雪女は後退りした。
ネズミはボクの掌で寝息をたてていたことに気づいた。
「…首無、駄目だからね。ホントに可愛くなっても、捨ててきてちょーだい」
「…わかってるよ、あー怖い姉さんだ」
実際、図星だけど。
「はあ、2人ともいつから喋ってたの?まだまだ大掃除は終わってないんだから、さっさと再開してね」
互いの弱点
(知ってたけどね)