「雪女、廊下の雑巾がけ終わったぞい」

「あ、んじゃあ向こうの廊下もお願いします!」



あー、忙しーい!

年末の大掃除ってホンっト大変!冬は寒くて一番好きだし私としては過ごしやすくてありがたい季節だけど、この家はとんでもなく広いから大掃除となるとすーごく忙しい。

掃除や家事は好きだから苦ではないけれど。ただ単純に、忙しい。


「つらら、小さいホウキ知らない?」

「あ、さっき納豆が持ってましたけど…。っていうよりリクオ様は掃除などされなくて結構ですわ、私たちの仕事なんで…」

「ありがとう!おーい納豆ー!」


もう、若ったら!最後まで聞かずに行ってしまわれた若を見送って、一つ溜め息を吐き出し私は中庭に向かって歩いた。その途中、手を止めて話している首無と毛倡妓に会い、早く作業に戻るように言った。

中庭に着くと、優雅に木の上に座っている、若干ロン毛な男と奇妙な被り物を身に付けた男を見つけた。


「みんな掃除で忙しそうだなー、楽しいなー」

「ばか、なにが楽しいんだよ。おれは牛鬼組での大掃除でもうこりごりだね」

「ボクは掃除はしたくないけど、雰囲気が好きなの」

「ちょっとあなたたちなにしてるの、大掃除手伝いなさいよ!いま働かなくていいのは若とぬらりひょん様と若菜様だけよ!」

「うわ、でた」


まーたうるさい雪ん子がきたと皮肉たっぷりに牛頭が吐き捨て、後ろ向きに座り直した。どこまでも腹の立つ男!

牛頭とは出会い方もこの上なく最悪だったし、未だにお互い好きになれない。

馬頭の方は、出会ったときやってのけたことは今思い返すと信じられないような。まあ牛頭よりは仲良くなれそう。


私は近くから二本のホウキを持ち出して中庭に叩き付けた。


「あんたたちがいる木の落ち葉を掃除して下さい!できなきゃ今晩のご飯はなしよ」

「はあー!?ふっざけんなよ!」


喚き散らす声を振り払い、リクオ様の部屋に入って掃除のお手伝いをした。



「牛頭、やろうよ。牛頭は雪女にいいとこみせなくちゃなんだしさ!」

「ばか言え、なんであいつにオレがいいとこみせなきゃいけないんだよ」

「いったい!殴るなよ!牛頭の為に言ってるのに!」



リクオ様の部屋は日頃からきちんと掃除されているので、(私たちが掃除してますから〜!)必要なものとそうでないものを別けるくらいで済んだ。

リクオ様に“必要のないもの”と判断された小学校の教科書や昔のおもちゃが入った段ボールを持ちゴミ捨て場に行くついでに中庭に立ち寄った。


さすがに綺麗になっていい時間だった。なのに私がホウキを叩き付けた時となんら変化のない、落ち葉だらけの中庭がさも当たり前に存在していた。

あの2人、どうやら掃除しなかったようね。むっかーっとしながらずかずか中庭に入って行くと、怒りの原因の人間が2人見えた。


「雪女ー、風のせいでいくらやっても飛ばされちゃうよ!」

馬頭が嘆くように言った。
掃除、してたのね。
数秒前の自分が恥ずかしかった。


「あーめんどくせー!やめだやめだ、こんなもん」



うーん、ちょっとだけ可哀想。馬頭はまだしも牛頭がホウキを持って落ち葉を掃いた姿は想像しただけで異様に思えた。我慢してやったのに、こんな始末じゃあ気の毒だわ。


「…ありがとう。あなたたちがやるだなんて意外でした…」

ふんっとぶっきらぼうな牛頭を、馬頭が得意満面な顔で眺めている。


「気が向いたからだ、別にお前が頼んできたからじゃねーよ」


まったく、仕方ないやつ。

「うーん、そうね。今日は風もあるし、仕方ないから他をお願い」


その言葉を合図に2人はぴょんと飛んで、私からずっと遠くに離れたとこにいた。

「けっ!やーなこった!」

「ボク休憩するからー!」


大声で言い放ち、同時に走り去った。


「え、ちょっ、まちなさーい!!」



やっぱり問題児だわ、牛頭馬頭!


ビッククリーニング!






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